『ゆとりの家』お引渡し。。

 『ゆとりの家』のお引渡しをしました。
これで今まで親しんで通ってきたお住まいにはもう自由には出入りはできません
いつもながら娘を嫁に出すような寂しい気分。。
でもそう言いつつ、これからどんな風にこのご家族と一緒に歳月を経ていくのかなと〜・・本当は楽しみでもあるのです。やっぱり嫁を出す親の気分ですね。
また時折呼んでいただいて、そのご家族と共に変わっていく姿を拝見させていただくのを楽しみにしましょう〜

『ゆとりの家』の建て主さんと出逢って4年が経ちます。
建て主さんはあちこちの設計事務所を何軒もまわった末にAA STUDIOにやってきました。家づくりを考え始めた頃は、美術館のような家を建てようとか思っていたとか
オシャレで斬新な住宅をもとめて建築家の方々にたくさん提案をしてもらったそうです。なかには真四角の箱で周囲に対しては窓も庇もないような家の提案もあったとか言ってました。面白いことに、その頃から言うと今の建て主さんたちの変遷ぶりは180度と言えるでしょう。
私も確か・・「そんな町並みに対して窓もないような家をつくったら、外で犯罪があっても誰も助けてくれないような冷たい町並にならないかな?」と助言した覚えがあります。できるだけ町に対して、心地よく。町を良くしていくための住まいであって欲しい。。それが私の考えでした。

もとめる物はとてもレベルの高いものを求められる建て主さん。
ある建築家の方には「あなたの求めるものを叶えようと思ったら、まず家は建たないでしょう!」と言われ、ずいぶん傷ついたと聞きました。
でも・・そんなことはなく今、思い描いた住まいを手にし、「この住まいで本当に間違いなかった。良かった。」と家が建つ前からいつも口癖のようにおっしゃっていた建て主さんでありました。

「ずいぶんと変わった。」と言うのも口癖でした。
私たちと付き合いだしてから、水道水ではなく山水を汲みに行きだしたり、食も安全・安心な物を求めるようになったり、また環境的なことも関心が高まったと言われました。
住まいに対する考え方も同じように変わってきたのかもしれません。
私たちとしても家のことだけでなく、もっとひとつひとつの暮らし方に関心をもってもらいたいので、家づくりをとおして変わって来られた事がとても嬉しいです

家は欲望を満たすものでもなく、また美術館でもありません。
暮らしを包むもの。
未来へと・・平和で安心できる心地いい暮らしを繋げていくための場でもあります。。
家づくりを通してあらゆる昔ながらにつながってきた手仕事が、また繋がっていくことができました。
こうやって一軒一軒の家づくりが未来をつくり、社会を、町並みをつくります。
愛ある社会になっていくために。

住まいが人にも自然にも優しいものとなった時。
この住まいが教えてくれるでしょう。
住まうことの豊かさと感動を。。

さて今頃、お引越しを終えて、どんな一夜を過ごされているのかな。
きっとこれから日々あらたな感動や発見があると思います。
自然の移り変わりを映し出し、そして住む人を育んでくれる住まい。。
またお話を聞かせていただくのを楽しみにしております。

どうもありがとうございました そして3年間お疲れさまでした。。
末永くお幸せに。。

『ゆとりの家』の完成見学会。。

 ついに!『ゆとりの家』完成〜です
いつものごとく3年がかりの家づくり、それももうあと数日でお引渡しです。
なんだか寂しいものです。。
その前に建て主さんのご厚意により見学会を実施させていただくこととなりました
今回は家づくり塾はなしで、見学者さんにゆっくりと木と土の家を体感していただきたく思いました。
朝からたくさんの方々に来ていただき賑やかな見学会となりました。

随所では、畳や木組みや和紙や表具のレクチャも付け加えて。。
みなさん真剣に考え、そして五感で感じていただきました。
みなさん思い思いに何かを感じていらっしゃっるご様子でした。。

また今回の見学会では、一般の方々に混じって大工さんも多く来られました。
はるばる高知県や四国中央市から足を運ばれ『ゆとりの家』を見に来てくださいました。
またこの家を手がけてくれた棟梁中ちゃんも他の大工さんを連れてひょこり見学に来られ、そして今進行中の『風薫る家』の大工さんたちもやって来られました。
こうして大工さんたちが見学会に足を運んでくれるのはとても嬉しいことでもあります。
またそのほとんどが若い大工さん達であるので、やる気のある若手大工さん集結にこちらもワクワクします
そうそう昔ながらの家づくりを始めようと思いたった8年前。やる気のある若手大工が皆無で、先の見えない未来を嘆いていた私たちでした・・。でもこうやって今やめぐり合わせがあってやる気のある若手大工さんたちとも出会え、今は未来は明るいぞと感じるところ

大工密度の濃い見学会
カウンターの下や、外壁の板張りの様子や、木組みの納まりなどの随所を細かく観察されていました。一般の人とは目の付け所がまったくちがうプロでもあります。こちらも見劣りしない家を造らなくては・・とあらためて良い励みとなります。



夜の部も
たくさんの方々に、木組みのこと、木のこと、土のこと、和紙のこと、畳のこと、表具のこと、先人達の知恵のこと、未来のこと、お伝えできました〜
私たちは何を未来に遺していきたいか。。
少しでも伝わることができれば、未来はこの温もりのある住まいのようになります。。
貴重な発信の機会を与えくださった建て主さんに感謝いたします
どうもありがとうございました

完成見学会のお知らせ


『ゆとりの家』完成見学会のお知らせ<完全予約制>

 

今回時間的に余裕がなく断念をしておりました完成見学会ですが、
建て主さんのご好意を頂きまして開催する運びとなりました!
AA STUDIOの家づくりは1年掛りと長期のため
完成見学会も1年にあるかないかの貴重さ。
ぜひこの機会に木と土でできた住まいの心地よさをご体感くださいませ。
この木と土のなんとも言えないぐらいに心地いい空気感を感じるたびに、
この家づくりで間違いなかった〜!という実感を味わいます。
現代人が忘れ去った心地よさを、昔ながらの家が教えてくれるでしょう。。
きっと驚きをもって、住まいのもつ本当の心地よさを知ることが出来るでしょう。
生き物として安心でき、もとめる空間がここにあります。
ぜひこの機会にご体感くださいませ。。
当日は夜の見学会もご体感して頂こうと思います。。
今回は塾は開催しませんが、その分ゆっくりとお寛ぎいただき木と土でできた住まいを
ご体感して頂きたく思います。ぜひに!

なんだか消費税増税で家づくりを焦られている方々がこの頃多いようです。
良い家づくりは焦らず急がずが鉄則です。。

【日時】3月24日 日曜日 10時〜20時                     
【場所】松山市道後(詳しい場所は申し込み後にお知らせ)
【申し込み】前日までにメールにて『申込書』を送信ください
      asuka-archi@nifty.com 

***************** 申し込み書 **********************
 ・名前                                     
 ・名前                                     
 ・住所                                     
 ・メールアドレス                        
************************************************

完成間近です。。

『ゆとりの家』も、もうすぐ完成です〜
しっとりと落ち着いた雰囲気になりました。
入って下さっているステンレス屋さんも、「今まで見た中で一番いい家ですね!」と言ってくださいました。嬉しいですね。家具屋さんも「橋詰さんの家は、空気感がちがいますよね。」って
嬉しいですよね〜。なんたってこの空気感の違いがわかってもらえるのは一番嬉しいんです
これは素材感のちがいなんですよね。今時の家では感じられません。ボードでは感じられません。木や土だからこそ放つ心地よさ〜なのです
またこのほんの少しほの暗い感じも素敵なんですよ。
今まで「暗いのは・・ちょっとねえ・・」と思っていたんですが、昔ながらの家づくりを手がけ始めて、この土壁が放つ陰影の世界に、ぐぐっと惹きつけられました。今まで感じたことのない世界だったものでね。陰影礼賛と、よく言ったものです。これは白い壁ばっかりつくっていたら正直知ることができない世界でした。
建て主さんにも「この暗さイイよねっ!」って言われました。ラフプランの段階に「ほんのりと暗い感じがとてもイイですよ。」とお話したときは、あまり暗いのは好きではなさそうだったんですがね。面白いでしょ〜。きっとみんな大好きな陰影ではないでしょうか。

さて、あと一息。。
今回は時間の関係上、AASTUDIOは完成見学会をしませんが、
工務店さんの方で見学会をするようなので、もし見に行きたい方がいましたら、西渕工務店さんにお問い合わせください。。

また特別にどうしても見たい!という方がいましたら、
時間が合うようでしたら、ご案内をしますので、お問い合わせください。。

大地とつながる床。。


 『ゆとりの家』工事終盤となっています。
どんどん仕上がっていく家に、寂しさもこの頃から増していきますね。。

さて、例のモルタルもセメントも使わない、自然素材だけでできる床を工事中です
素材は、土(砂利)と石灰とニガリと水。
こんなシンプルな素材で床ができます。
そう、昔ながらのタタキ』の床です。
木と土の家には馴染みがいい床

構造体の木や、壁の土と同様に、身近で無尽蔵にとれる天然素材であります。
ゴミも出ず、家の寿命がきた時は、家と共に土にかえっていきます。
ほんと、いつもながらこれ以上に自然に優しい素材はありませんね。
目の前で練られていくのは何よりの安心感もありますね

材料を混ぜ合わせ、玉になった土をタタキ締めていきます。
すると石灰とニガリが反応して緩やかに固まっていきます。
闇雲にタタキ締めてもいけません。均一に叩かなければ、目に見えない土の層が不均一になり、あとあと割れの原因になります。

ニガリは土を固める役割もあるけれど、適度な湿り気を土に保たせる役割もあるようです。タタキ土間で、乾燥は禁物なのです
乾燥しすぎると、土である床は、痛みやすくもなるからです。土ホコリもたちやすくなります。
適度な湿気をキープすることで、表面の土はくっ付き合っていられるのです。

そのためタタキ土間のもっとも大事なことの一つに・・
『大地と繋げる』という事が肝心になってきます。
大地とつなげることで、大地からの湿り気が適度にあがってきて土間を健全にたもつのです。もしタタキの下に基礎でも打とうものなら、タタキは長くはもちません
う〜ん、昔の物は面白いです。
よく割れ割れになったタタキ土間を見ますが、それはその顕著な例。

湿り気=悪い、というイメージをもつ人がいますが、湿り気といっても本当に微かな水分なので、悪さをする湿気とは異なります。
土間の役割としても、適度な湿り気がある方が、夏場はその気化冷却の働きで空気が冷やされ、建物室内を冷やす役割があります。また、それとともに土間に野菜などを置いておくのにも、この土が大地とつながって適度な湿り気をキープしてくれ、野菜の保存性が良くなるのです。
大地とつながるは最も大事なことでもあるのです

セメントやコンクリートやタイルの床と大きく違うのは、この大地につながって呼吸しているという事でもありますから、タタキ土間の下に基礎を打つとその良さは無くなってしまうと言っていいでしょう。。

優しく柔らかい風合いの土間。。
左官さんも「この柔らかい雰囲気がいいやろ〜」っと。
なんだか吸いこまれるように優しく柔らかい雰囲気になるのは、母なる大地とつながっているからなのかな

さあ、土間完成〜と言いたいところですが・・
しばらく水分が抜けるまで、静かに静かに養生させてあげなくてはいけません
あと一ヶ月半ほど・・。工事終盤というのに
自然のものは何事も急ぎ仕事ではできませんね。
住まい手にもそれを受け止める大らかさが必要となってくるという事です

木と土の昔ながらの住まいは、住むにも自然素材への大らかさが必要な住まいですが、その工事段階からもまずは住まい手の大らかさが試される、いえ育まれると言ってもいい家ですね。
ここで待てない人は=まず自然素材の家には住めない、という事にもなりますね

さあ、おおらかに。
自然とともにありましょう〜

そろそろ・・

 そろそろ『ゆとりの家』の現場も、大工工事が終わりに近づいてきました。
棟梁ともお別れ
棟梁の中ちゃん、設計者の面倒な要望にも文句ひとつ言わず、また他の職人さんたちが仕事をしやすいように造作の納まりを工夫したりと棟梁としての心遣いが幾度となく見られました。気配りできる良い大工さんです。
見た目はほっこり系棟梁ですが、多岐にわたる複雑な設計者の意図を的確にこなし、その上で他の職人さんたちの仕事のしやすさなどにも気がまわる点は、熟練大工の凄みを感じます。西渕工務店さんきっての熟練棟梁でもあります。
まあ、まだ庭の板塀工事などが残っているのでほんの少しのお別れ。これからは左官工事やタイル工事、造作家具や建具工事のほうの職人さんが出入りすることになってきます。
建具屋さんもさっそく採寸。

アルミサッシをあまり使わない意向での家づくりですので、建具屋さんは大忙しです
この段階でまだ窓らしき窓ははいっていませんのでね。
家も仕上がりに近づいてくると早く窓が欲しくなってきます。
時々、猫が出入りしているらしいし・・
そういえば『つながる家+つなげる家』は猫に泣かされました・・
なので早く窓が欲しい〜。



そしてハシゴ階段もつきました!
2階がリビングなため、リビングバルコニーから庭に直通できる階段です。
2階暮らしなので、ちょっとでも庭に近くなるようにとの設計者の想いをこめて
薪ストーブの薪の上げ下ろしがここからだととても楽ですし、家庭菜園も楽しんで欲しい。
思ったより急ではなくイイ感じに出来上がりました。



格子の雰囲気も抜群です!
街中なので、窓を開け放っていても安心できます。出来るだけ自然の風を感じて暮らしてほしい。
当初はここにピアノがドンときて小さな窓の予定でしたが、階段からおりたさきに庭の緑が眺められたら素敵だなあと思って提案しました。今度は庭づくりが楽しみになってきます
さあ、これから左官さん登場で壁の仕上げ、土間の仕上げにはいります。
わくわく!

思い出のこる土塗り、『裏返し塗り』。。

 お盆もあけて、この3週間乾燥中だった『ゆとりの家』の荒壁もすっかり乾燥しました。今度は、グニュと出て固まったこの表塗りの裏側に、裏返しが食いついていくことになります。食いつきが良さそうです。またこのしっかりと乾燥した表塗りに裏返しをすることで、裏返しの水分が表塗りに吸い込まれ、次の乾燥は少し早くなるとか。

そしてまたまた泥臭い薫りでも私はすっかり鼻がなれしまって、最近はあまりこの泥の匂いを感じません。左官さんもそうみたい。ご近所さんに聞くと、塗ってから4日ほどは匂いが漂っていたということでしたので、完全に乾燥しきるまで匂いがあるという訳ではなさそうです。しばらくまたご近所さんにご迷惑をかけつつの裏返し塗りとなります。まあ、ご迷惑と言っても身体に害のある揮発性の化学物質を撒き散らすような吹付工事とは違いますのでね

この日はしばらくぶりの作業とあって、建て主さんも現場に来られて、職人さんに飲み物やお菓子をふるまっていました。
そこで・・家づくりの貴重な機会なので土塗り体験をしていただくことに
そう、あの職人さんたちが生クリームを塗るかのようにスイスイと塗り上げていく土塗りを、ぜひ体感してほしい

子供さんもやる気満々!まずは親方に見本と指導をしてもらって、では 
スイスイ〜


のハズが・・、ボタ・・ボタ・・



手板の上に載せられた泥を、コテの上に載せ替えることも出来ないまま、泥は床に落ちてしまいます・・ 泥は壁に塗りつけられるより、床に塗りつけられる、といった感じ、笑いが止まりません

見るのとやるのとでは大違い!
しかも泥を載せた手板が重たくて、手板を持っていることさえ出来ない様に

 

ははは〜ん、おかしいなあ。職人さんはあんなにスイスイと生クリームを塗るかのように軽々と塗っているのに 
もう一度、職人さんの作業の様子を観察する建て主親子。。

「すごいいい〜!!!」
「みてみて、あんなに一度にたくさんの泥をつけているよ〜!!」
自分たちでやってみると、それまで何気に見ていた職人さんたちの仕事が、感動をもって理解できます 何事も体験してみるべし

さあ、ママと再チャレンジ



 

なんだかとっても楽しかったみたいで、二人とも「めちゃめちゃ楽しい〜!」の歓声をあげながら、壁塗りを体感していきます。
これで職人さんのたいへんさも実感できたので、きっとこれからは左官さんの見方が変わってくるでしょう。そして何より自分たちの家づくりに関われたことは、きっとずっと心に残る良い思い出になったのではないかな。

なんだか微笑ましい光景に。嬉しくなります。
最後に記念に記して、壁塗り体験終了

夏休みの宿題の日記に、さっそく書くみたい
どんな日記になったか、また見せて欲しいな〜。。
思い出にのこる楽しい壁塗り体験となりました 矢野さんありがとう。。

母なる大地の荒壁塗り。。

 『ゆとりの家』に荒壁土がはいってきました。やっぱり独特な匂いが漂います
藁が発酵した独特の匂い。藁が完全に分解され髪の毛のような繊維になるまで寝かせた熟成荒壁土でもある証拠です。ほら、無数の藁の繊維があるでしょ

これが土と土をしっかりとつなげて割れのこない壁にしていくのです。熟成させてまでの壁土は一般的にはあまり使われていません。でもこの荒壁が雨にも強く丈夫なのです。
熟成荒壁土のにおいは嗅ぎなれない、まるで豚糞のような匂いなので、工事前にはご近所にご挨拶をしています。でもまたあらためてご挨拶に。街中だと特に密集しているので、窓をあけて暮らされている人は匂いが気になります。時にクレームもあるみたいで関係者もそこは神経をつかいます。
でも吹付工事のように有機溶剤などの体に悪い化学物質をつかっている訳でもないのです。だから私は胸を張って「体に害のあるものではないです。田圃の泥の匂いです。」ということでお話をしています。
ただなかなか街中では土のにおいを嗅ぐこともなくなっている昨今、匂いそのものへの違和感があるようです。街中に行けば行くほど『お互い様』の意識も薄いので、難しく感じることも時にはありますね 
でも建て主さんがご近所との付き合いをうまくやってくれていればいるほど家づくりとご近所関係も上手くいきますね やっぱりここが何事も大事

hahaha、やっぱり見た目はウ○コのようです 失礼。。
この芳しい荒壁土を使って『表塗り』をします。まずはヨコ間渡し竹のある面を表として、こちらから塗りはじめると相場が決まっています。それはヨコ間渡し竹のある面は、その後に『貫伏せ』をおこなったりと2工程となるからでもあり、『表塗り』『裏返し』『貫伏せ』の基本3工程で荒壁が出来あがります。

『表塗り』がされて、貫だけが見えている様子。
3工程目の『貫伏せ』で貫が隠されることになりますが、貫があるために荒壁に割れが入りやすいのが表面でもあります。だから外部に絡む裏面は、貫の外側にタテ間渡し竹をもってくるのが鉄則となり、貫部分の割れから雨漏りがしないための左官の智恵のひとつと言えます。う〜ん、ここにもより良い家づくりのための智恵が 家づくりすべてが智恵のかたまりだと言えるが、昔ながらの家づくり。ひとつひとつが幾世代もかけて試行錯誤のうえで磨き育まれてきた意味ある職人たちの仕事なのです
ここに惹かれて私たちの家づくりが昔ながらの家づくりに方向転換してきたのでもあります。

 

これが裏面。壁土がクグニュっと出て、竹小舞に食い付いています。
これで乾けばそう簡単には外れないはずです。そしてこのグニュっとはみ出した壁土に次回は『裏返し』のための壁土が食い付くようになるのです。

それにしても荒壁が塗られてくると、急に落ち着いて家らしくなってきます。
竹の凛とした空間から、柔らかく優しく包み込む空間に変わってきます。
不思議、、母なる大地の土のもつ力。。
それを感じます。

今までの時代は目に見えるもの(理論的なもの)に評価をおいてきた時代でした。見た目とか、デザインとか、数字とか。でもこれからの時代は目に見えないものに評価をおく時代にはいってきたことを強く感じます。時代が変わってきています。目に見えないところ、感じるところが評価される時代。

もちろんそのために人々も、目から入ってくる情報だけでなく、五感をつかって物事を評価していくことが問われていきます。目からはいった情報を頭で考えるというより、五感を使って自らのなかから沸いてくる感覚で判断するということ。
原発問題も然り。どうこう頭や理論で考えるより、「気持ちわるい。安らげない。なんか気持ち悪くてイヤや〜。」という生き物本来がもっているアンテナの方が正しい判断ができるのです。
理論で積み上げるのは限界があります。言語にするのにも限界が。感覚は、理論や言葉では表現しきれないほど高度で繊細だからです。この高度な能力を、言語や理論で説明できないからと切り捨ててはいけません。高度なゆえに我々の理解が追いついていないだけなのですから

家づくりも同じ。
アレコレと頭で考えるとキリがないことが山ほど出てきます。また目で見える情報など、本来の情報の数%程度しかないのです。本当はもっと生き物として「安心できるの?安らげるの?落ち着けるの?心地いいの?気持ちいいの?優しいの?」(・・・やっぱりここでも言語にすると限界があります)を感じることです!
大地の土がもつ力は、不思議な安堵感があります。そして包み込まれるような優しさとお母さんのような柔らかさを感じます。生き物として、土に育まれ、そして還っていく場所でもありますから、何か絶対的な安心感があるんですよね〜。
ぜひ土壁の住まい、目で見るのではなく、感じてみてください
ちなみに木には男性的なエネルギーを感じます。力強く雄々しい。守る力を。
いつも住まいには、母なる大地の女性のエネルギーと、木組みの力強い男性のエネルギーによって出来上がっているんだな〜と感じるところです。この二つのエネルギーが合わさって初めて住まいとなるんです。スゴイでしょ

五感は使っていくことで敏感になります。生き物として本来備わっている能力でもありますから。
ただし現代は頭や目ばかりを使っているので、そちらばかりに気をとられているのは間違いないですね。

さてこれでしばらく荒壁は乾燥です。風通しよくして、次回の『裏返し』まで2週間ほど小休止です

木+竹。。

 梅雨もあけ、いよいよ荒壁をつけるための準備にはいりました。
木組みの空間に、竹が加わります。この延々と自然の素材でつくられていく昔ながらの家づくりに魅せられ今の私たちがあります。今時の家づくりなら断熱材を詰めて石膏ボードを張る準備をしている頃でしょうか。
見ていて目にも心地よく、体感的にも清々しい。。
初めてこの家づくりを体感した時に「ああ、どこまでいっても綺麗やな〜。」と、魅せられてしまった訳です。今時の家づくり、建築途中の断熱材を入れたり、石膏ボードを張ったりしている様子を「綺麗やな〜」なんて見れないですものね



 

現場にはそれぞれの用途に合わせた竹がはいっています。竹を掻くための縄ももちろんビニール縄ではなく、自然の素材の藁です。
間渡しに使われる女竹も太さの大きい物と小さい物があります。主に荷が掛かりやすいヨコ間渡し竹に太い女竹を使用します。私の指以上にあるゴツイ女竹ですね。そして貫の外側にくるタテ間渡し竹はヨコと比べると小さい。

見るからに丈夫そう。。
職人さんたちの本来の仕事って、そこにひとつひとつ智恵があります。ただなんとなく・・という訳ではなく、長く丈夫に持たせていく為にとか、腐らないようにとか、そこに意味があるんです。
この事『意味があるつくり』である事に、昔ながらの家づくりを始める前の私にはカルチャーショックでありました。今時の家づくりで意味のあることは少ないですから・・ いえ、むしろ意味に反したことばかりが目につきます。
意味とは、自然の道理、自然界の摂理にそうための理という事です。先人たちの生み出した『意味ある形』に惹かれ始めた所以でありました。

我らが期待のホープまーくんです。頑張って左官やってますよ〜
間渡し竹をしならせて穴に間渡しを納めていっています。柱に傷をつけないように加減をしつつ、かなり力もいります。でも力を入れすぎるとボッキっと折れるから加減が大事。

間渡し竹が納まった状態です。

ここに竹を割った割竹を掻いていきます。(「編む」と言わずに、「掻く」と言います。)

まずはタテの割竹から。先ほどの間渡し竹に割竹を藁縄で掻いていきます。
この時に藁縄は水で湿らせて作業します。水で藁が湿ることで縄がしなやかになります。
そして藁縄の編み方は、『千鳥掛け』をします。

これが「千鳥掛け」です。
縄の編み方は2種類あって。「螺旋巻き」と「千鳥掛け」。螺旋は縄を引っ張れば解けやすく、千鳥は交互に締めて巻いていくため解けにくい。これも「螺旋巻き」のほうが
簡単に縄を掻きやすく一般的なやり方ですが、より良い仕事をめざす昔ながらの家づくりは「千鳥掛け」をして頂いています。

そしてタテの割竹は下の構造材からは浮かすこと!
これは必須で、タテの割竹が構造材に引っ付いていると、重い荒壁土が付いて荷が掛かって沈んだ時に壁が弓矢のように膨らんでしまうから。沈みを計算しておいて、ほんの少しタテ割竹を浮かしておくんです。さすが!
ひとつひとつ意味ある仕事があるんですよね
昔ながらの家づくりは、そんな些細な意味ある仕事の積み重ねでできあがってゆきます

ゆっくりと、じっくりと。。

 『ゆとりの家』も、建前以降の雨続きで、現場もゆっくり。。
梅雨の晴れ間を見計らいながら屋根の板金仕事をすすめていく。
まあ、急がず慌てずの工期を確保しているから、それもできること。

職人さんたちとは常に話し合いながら各所の納まりを決定していく。
つどつどの風景。作戦会議といったところだろうか。
この職人さんたち目線での会議がないと、良い家はできない。
家づくりの現場では、納まりが難しかったり、長く使っていくうえで発生しそうな問題もでてくる。それぞれの専門職からの問題や提案をうけて、それに関連する職人さんたちとの話し合いが進められる。
このときも浴室の天井裏にたまりそうな湿気を後々のためにも抜く工夫をしておこうという話になり、作戦会議。建て主さんからすると一生気がつかないで終わることなのかもしれないけど、現場では常にさまざまな配慮が施されながら進めていかれる。こういった積み重ねがあるかないかが、大きく家の出来栄え(出来上がってすぐの見た目ではない、後々長く住んでいった時の価値のこと)に左右するところ。
だから作戦会議は大事なんだよね

 

私は職人さんたちの声を大いに活かしたいタイプ、だから職人さんたちも率直な意見を出してくれる。もちろんそうでない設計者も多いし、極力職人とは話合いたくないと言う設計者もいて世間の家づくりはさまざま。
でもわたしにとっては、長い経験をもって専門職としてやっている職人さんたちが納得して自信をもってできる仕事がまずは大前提。そしてそのうえで私という設計者が美しさや使い勝手、建て主さんの考え方、長い年月に耐えうるための全体の調和をはかっていくのでもあります。
家は設計者の図面さえあれば出来上がっていくと思っている人も多いようだけど、でも違う。本当の良い家づくりは設計者だけの図面でできあがるものではなく、まさに職人さんたちとのチームによって完成していくものでもあるんですよね

そのチームにはもちろん建て主さんも加わっています。
3時の休憩時間に、ジュースやお菓子の差し入れ。職人さんたちの気持ちや仕事に感謝して、現場を心地よくしていくこと。建て主さんの職人さんへの心遣いや思いやりが、そのまま家にかえっていくんだとも思います。
建て主さんも頑張ってます