2012.07.31 Tuesday
いつもいつも。。
いつもこの時期 、暑さが厳しくなる夏本番となるこの時期を見計らってお約束ごとのように。ほんと『新居浜の家』の建て主さんには未だに頭がさがります。
きっと大工さんたちにも同様な差し入れを持っていかれたこと間違いなしです。
もうお住まいが出来て4年が経とうとしていますが、折にふれて職人さんや設計者へのお心遣いに胸を打ちます。
『新居浜の家』の建て主さんは、本当に『よく出来た施主』と呼べる建て主さんでした。これはきっと職人さんたちも同じではないでしょうか。「あの施主はよう出来とる」と職人さんたちがいつも声をそろえて言っていましたし。
4年経った今でも「この建て主のためなら・・」と一肌脱ぎたいと今でも思っています。それは大工さんたちも同様でしょうし、それだけのことを家づくりをとおしてしてくれたというのがずっとあります。
普通一般では施主がお金を払って、職人が施主さんのために色々と仕事をするのが常ですが・・
『新居浜の家』の建て主さんは、並々ならぬ昔ながらの家づくりにおいて、職人さんたちの気持ちがお分かりになる方でした。そして職人さんたち(私たち設計者も含む)の仕事ぶりや気持ちに対して、建て主としての気持ちを返せる人でありました。
「お金を払っているから当たり前」「施主のほうが上」という気持ちは微塵もなく、むしろずっと現場で職人さんたちのために心遣いをしたりして私たちのために働いてくださったのを未だに鮮明に記憶をしています。
現場での10時、3時のお茶は現場に誰かがいれば欠かさず出し、しかも冬はドリップしたての珈琲を夏はそれをアイスでと手間をかけて出してくださいました。
そう、夏は暑いので現場内に木陰をつくるためにテントを張り、テーブルや椅子を設けて職人さんたちの休憩所をもうけてくださいましたし、冬は寒い身体をあたためるために石油ストーブを置いてくださり、その時々で至れり尽くせりと。
現場の掃除も気がつけば建て主さんが自然としていました。
遠方まで2tダンプいっぱいの藁を運んだり、現場内に荒壁土を熟成させるためのプールを作ったり、荒壁土を定期的に練ったりと建て主さんも一緒にしました。
時に職人や私たちを喜ばそうと家づくりの日記を冊子にして下さって、大工さんたちを喜ばせてくれました。
建前の時は、わざわざ足場を組んで撮影舞台をつくってくださいましたし、上棟した夜の打ち上げでは大工さんたちを喜ばせるために上棟した家を投光器でライトアップするという粋な演出をしてくれました。年末には、職人たち一同を集めて、お寺で精進料理での忘年会(設計者がベジなので)を開いてくださいました。
私なんかはいつも現場に行くたびに畑のお野菜を頂いたりしました。打ち合わせや現場がおそくなり晩御飯をご馳走になることも度々でした。
時に魚屋さんが行商にきて、大工さんたちにお土産に魚をもたせて帰らせたりしていました。言うとキリがないぐらいに建て主さんには色々としてもらいました。
現場で職人さんが働くのと同様に建て主さんも働いているようでした。
私のなかで、昔の施主はこうであったのかなと思わせる施主さんでした。
昔ながらの家づくりでの最初の施主さんでもありましたので、色々と初体験山積みのなかで懐を大きくし見守ってくださった気がします。先行きが不透明で実現できるか否かが分からない家づくりでしたが決して私たちの前で不安や愚痴を言葉にしたことはありませんでした。隣接して住む爺やんからは口うるさく言われていたようでしたが、それも自分たちの胸に収めていたようです。きっと心中は不安もあったことだと思います。
本当に大切なもの、良いものが分かる方でした。打てば響く感じでした。欲がなく、常に人の気持ちが分かる方でしたから、消え去ろうとする仕事たちに対して心を向けてくださる方でした。
本物の仕事を、設計者や職人たちは知る機会を与えられ、挑戦の場を与えられました。職人たちも生かされて喜びに満ちて仕事をしていました。こんな現場は今時はないことでしょう。建て主との共同作業でできあがった家と言えます。
この家づくりをとおして職人共々大きく成長させていただいた、そんな気持ちです。
私たちの家づくり塾の活動や、徳さんの手織り畳表のことも気にかけてくれていて、活動資金を握らせてくれました。決して少ないお金ではありませんでした。数か月分の給料に相当するぐらいの額でした。それは自分のお小遣いとして施主さんが貯金されていた大切なお金で「他によい使い道もないので使ってほしい」と言われました。どこまでも欲がない人で、どこまでも他人のためになれる人でした。
施主さん的には、金銭的に合わない事をしてくれているなという気持ちでみてくださったのだと思います。でも私たち的には、お金があっても体験できないことをさせて貰っているなという感じでした。お互いがお互いのために尽くした家づくりでありました。そのお金は私たちの必要な時の活動のために使わず大事に取ってあります。
今でもこうやって時折、私たちのことを思い出してくれること、変わらない建て主さんを感じます。ウナギを料理しながら色々と建て主さんとの思い出がよみがえってきました
また夏休みにでもお邪魔することにしようかな〜。。