木と土の温熱調査。。

 『木の家ネット』で夏に行なった温熱調査の続編、冬の温熱調査が始まりました
「木と土の家は、冬は寒くて住みづらい?」
「断熱材を入れなくては冷暖房費がかかりそう・・」
そんなもろもろの木と土の家の悪いイメージを払拭するための実態調査でもあります。

今回も同様に『新居浜の家』の建て主さんが協力をしてくださいました。
『新居浜の家』は木と土の昔ながらの家づくり。今時の断熱材らしきものは一切ありません。窓も気密サッシや断熱サッシは使ってはおらず、隙間風がありそうな昔ながらの木製建具。しかも吹き抜けのある25畳ほどの広いLDKをもつお宅なので、いわゆる今時の言い分では『とてもとても寒い家』となりそうです。さてさて

今日は少し雪も舞っていて、いつもより少し肌寒い感じ。
そんななかお伺いして、LDKにお邪魔すると、ほんわりとした暖かさが出迎えてくれました。
薪ストーブには火がはいっており、この家の冬の暖房器具になります。
「節約気味につかっているの」と奥様。火力全開というよりも、一本の薪が微かに燃えている感じ。時折、消えて無くなろうとする時にまた一本といったように確かに節約気味に使っている様子。

LDK南面の畳の間に目をやると建て主さんが節約モードでやっている理由が分かりました。太陽からの陽射しがさんさんと入ってきて暖かいのです。。
お伺いした時刻は1時半。太陽高度としてはもっとも高い時間帯だったので、この時間帯でこれぐらい日が入れば、晴れた日の日中は太陽熱を取り込むことができます

夏、お邪魔した時は、逆に雨戸を締めて、夏の陽射しによる輻射熱が少しでも室内に入らないような工夫をされていました。それが功を奏して室内の温度上昇が殆どなく、夜間に冷やされた室内は日中遅い時間まで外気温にあまり影響されることがないという優秀な調査結果が出てました
今回はその逆で、さんさんと降り注ぐ太陽光を、積極的に取り込むような暮らしをされておられた建て主さん。夜は熱を逃がさないために雨戸や障子も締めます。さすがです

昔から暑い寒いは暮らしの工夫と言いますが、まさに季節に応じた暮らし方。
夏の温熱調査でも、住まい手の暮らし方ひとつで室内の温熱環境の違いがリアルに現れてきました。土壁の家だって住まい手の住まい方ひとつで、夏は熱がこもって過ごしにくくなることだってあります。住まい手さん自身が暑い寒いに敏感になり、ほんの少し暮らしの工夫をすることで冷暖房に頼らない省エネルギーな暮らしが出来るのです。
我が家も夏はスダレひとつでとても過ごしやくすなりましたもの

窓際の温度は31度、ねっとっても暖かいでしょ。この太陽熱が土壁に蓄熱されて夜間の冷え防止に役立つのです。日本版・電気を使わないパッシブハウス!ですね
そう先人たちはちゃんと考えていたんです。

今の時代、そういった工夫なしで暮らそうとするから冷暖房をフル稼働させなければならず・・、冷暖房の効率をあげるために気密や断熱をたくさん必要とします。しかも厄介なことに高気密・高断熱の住まいの方が、省エネといった風潮になりつつあるのが現在。国も現在、日本古来からある家づくりよりも断熱材をしっかりと施した北欧的な住宅を推し進めようとしています。それも3.11以降、拍車が掛かっている様子。なんか裏がありそう〜・・そう、進めているのは経済産業省。どうやら住宅の断熱化は経済活性化策でもある様子。

確かに・・断熱材をたくさん詰め込んで最小限のエネルギーで冷暖房を稼動させる家は、冷暖房を湯水のように使う家よりは省エネルギーかとは思います。しかし断熱材や気密材、断熱サッシだって工場で造られる製品。トータル的なエネルギー消費量を考えれば決して省エネではないし、しかも日本の気候風土で育ったことのない家が今後日本という気候のもとで長く耐えうるのかは答えがまだ出ていないのです。家が長く持たなければそれこそエネルギー浪費の家になります・・
現代は、昔の家のように100年200年もつような家ではなく、26年が平均寿命だそうです。これを浪エネと言わずしてなんと言う

以前、高気密・高断熱の家を手がける社長さんが「冬は半そでひとつでも十分なんだよ〜」っと言っておられた言葉、とても腑に落ちない違和感を感じさせましたが、エネルギーを使うことが前提、人は我慢はしないよが前提の高気密・高断熱なら、それは大きな誤りです。暮らしの工夫やちょっとした辛抱も必要なこと!地球の資源や、地球の環境は、無限に永久的にある訳ではありません。多くの環境問題は私達たった2,3世代の尽きぬ便利さや快適さを求めての結果でもあるのですから。

それを考えれば建具職人さんがつくる木の建具の方が手仕事を主とし、比べようもないぐらい省エネルギーであることは確かです。しかし・・世の中の風潮のなかで、本来はエネルギーをかけずして造られてきた物たちが消えていっているという姿を見ます
木と土の家も同様です。私たちの飽くなき欲求によって、昔あったエネルギーがあまりいらない物づくりたちが消されていっている・・なんとも寂しい話です

日本人としての『もったいない精神』を取り戻して、冷暖房を使用するを前提ではなく、出来るだけ使用しない家を目指したいところですね 
建て主さんの工夫。レッグウォーマーを履くと「暖かさが断然違う!」と言ってました。こういった事が本当は大切じゃないかな〜と私は思います。。
レッグウォーマーのように住まいも冬バージョンで襖で部屋を小さく仕切ったり、暖かい絨毯を敷いたりというのも冬の暮らしの工夫のひとつですね。

さて、面白い事を発見!
襖の温度と、壁の温度を計ってみたところナント、襖は2度も温度が暖かかった!
う〜ん、やっぱり冬場は部屋を小さく仕切って使われた襖ですね
ここにも先人たちの知恵があるのかなと感じた私です。人は周囲の壁面・床面・天井面からの輻射熱に影響されて暑い寒いを感じるので、これが本当なら壁より襖に囲まれた部屋の方が暖かく感じるという事です。
温熱調査では先人達が遺した、エネルギーをあまり使わずして快適に暮らすための知恵を探りたいと思ってます

『新居浜の家』はあまり薪ストーブを焚いてはいなかったものの、太陽の陽射しがあってなんだかほんわりとした暖かさ感があり、寒さ感はありませんでした。
建て主さんも「他の家に行くと、同じ16度の室温があってもなんだか寒いのよね・・。うちの家は16度あると暖かいのよね。それがなんなのかは分からないけど・・太陽のような暖かさがする?・・なんかうまく言えないけど空気が違うような・・芯から温まるような感じがあるの。」と、
総合的に満足されて冬を暮らされているようでした。
温熱調査つづくです。。

大地とつながる床。。


 『ゆとりの家』工事終盤となっています。
どんどん仕上がっていく家に、寂しさもこの頃から増していきますね。。

さて、例のモルタルもセメントも使わない、自然素材だけでできる床を工事中です
素材は、土(砂利)と石灰とニガリと水。
こんなシンプルな素材で床ができます。
そう、昔ながらのタタキ』の床です。
木と土の家には馴染みがいい床

構造体の木や、壁の土と同様に、身近で無尽蔵にとれる天然素材であります。
ゴミも出ず、家の寿命がきた時は、家と共に土にかえっていきます。
ほんと、いつもながらこれ以上に自然に優しい素材はありませんね。
目の前で練られていくのは何よりの安心感もありますね

材料を混ぜ合わせ、玉になった土をタタキ締めていきます。
すると石灰とニガリが反応して緩やかに固まっていきます。
闇雲にタタキ締めてもいけません。均一に叩かなければ、目に見えない土の層が不均一になり、あとあと割れの原因になります。

ニガリは土を固める役割もあるけれど、適度な湿り気を土に保たせる役割もあるようです。タタキ土間で、乾燥は禁物なのです
乾燥しすぎると、土である床は、痛みやすくもなるからです。土ホコリもたちやすくなります。
適度な湿気をキープすることで、表面の土はくっ付き合っていられるのです。

そのためタタキ土間のもっとも大事なことの一つに・・
『大地と繋げる』という事が肝心になってきます。
大地とつなげることで、大地からの湿り気が適度にあがってきて土間を健全にたもつのです。もしタタキの下に基礎でも打とうものなら、タタキは長くはもちません
う〜ん、昔の物は面白いです。
よく割れ割れになったタタキ土間を見ますが、それはその顕著な例。

湿り気=悪い、というイメージをもつ人がいますが、湿り気といっても本当に微かな水分なので、悪さをする湿気とは異なります。
土間の役割としても、適度な湿り気がある方が、夏場はその気化冷却の働きで空気が冷やされ、建物室内を冷やす役割があります。また、それとともに土間に野菜などを置いておくのにも、この土が大地とつながって適度な湿り気をキープしてくれ、野菜の保存性が良くなるのです。
大地とつながるは最も大事なことでもあるのです

セメントやコンクリートやタイルの床と大きく違うのは、この大地につながって呼吸しているという事でもありますから、タタキ土間の下に基礎を打つとその良さは無くなってしまうと言っていいでしょう。。

優しく柔らかい風合いの土間。。
左官さんも「この柔らかい雰囲気がいいやろ〜」っと。
なんだか吸いこまれるように優しく柔らかい雰囲気になるのは、母なる大地とつながっているからなのかな

さあ、土間完成〜と言いたいところですが・・
しばらく水分が抜けるまで、静かに静かに養生させてあげなくてはいけません
あと一ヶ月半ほど・・。工事終盤というのに
自然のものは何事も急ぎ仕事ではできませんね。
住まい手にもそれを受け止める大らかさが必要となってくるという事です

木と土の昔ながらの住まいは、住むにも自然素材への大らかさが必要な住まいですが、その工事段階からもまずは住まい手の大らかさが試される、いえ育まれると言ってもいい家ですね。
ここで待てない人は=まず自然素材の家には住めない、という事にもなりますね

さあ、おおらかに。
自然とともにありましょう〜

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